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ブプロピオン(Wellbutrin)からの切り替え: 日本の処方医のためのガイド

ブプロピオンは国内未承認で、同じ作用機序(NDRI)の薬もありません。 海外から来た患者さんが服用していれば、国内承認薬へ置き換えます。決め手は「何のために飲んでいたか」です。英語版(海外の主治医向けを兼ねる)は Switching Patients Off Bupropion in Japan、患者さん向けの解説は Wellbutrin in Japan です。

なぜ国内にないのか、患者さんは持ち込めるのか

うつ病を対象に国内第III相まで進み、そこで止まっています。 GlaxoSmithKlineの固定用量試験(NCT01138007)は2012年に完了しましたが、製品化されませんでした。日本うつ病学会の高齢者のうつ病治療ガイドライン2023も、切替と増強の比較試験を引くところで「国内未承認」と注記しています。

持込は通常の処方箋薬と同じ扱いです。厚生労働省の個人輸入の規定では、処方箋薬は1か月分まで手続きなしで持ち込め、それを超えると輸入確認証が要ります(患者さん向けの手続き解説)。切り替えの猶予はこの1か月です。

ブプロピオンは何のために処方されていたか

ここを取り違えると、後の判断が全部ずれます。 理由は次の7つのどれかです。2つを兼ねている患者さんも多くいます。

  1. 忍容性を理由に選ばれた抗うつ薬
  2. 疲労・過眠・意欲低下という残遺症状への上乗せ
  3. 以前のSSRIで出た性機能障害の回避
  4. 体重増加の回避
  5. SSRIへの増強
  6. ADHD(診断あり、または診断名のない適応外使用。カナダのCADDRAガイドラインでは第三選択)
  7. 禁煙

役割別の置き換え先

以下はすべて国内承認・保険適用の薬です。 用量は国内添付文書に従います。

役割国内での選択肢根拠
抗うつ薬SSRI、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、ミルタザピン、ボルチオキセチンSTAR-D level 2 ではブプロピオン・セルトラリン・ベンラファキシンへの切替後の寛解率に差がなかった(HRSD-17で5人に1人から4人に1人)
疲労・過眠・意欲低下SNRIを第一に。次いでボルチオキセチンか鎮静の少ないSSRI。ミルタザピンとトラゾドンは避ける残遺する過眠・疲労はブプロピオンがSSRIより少なかった(Papakostas 2006)。CANMAT 2016 は疲労にブプロピオン(level 1)、エネルギーにデュロキセチン(level 2)を挙げ、2023年版 はエネルギー・疲労はSSRIよりSNRIに反応しやすいと記述
性機能障害の回避ボルチオキセチンかミルタザピン。それ以外はSSRIの最小有効量(パロキセチン・エスシタロプラムは避ける)メタ解析でブプロピオンとミルタザピンは治療に伴う性機能障害がプラセボと差なし(Serretti 2009)。SSRIで性機能障害の出た反応者をボルチオキセチンへ切り替えると、エスシタロプラムへの切替より性機能が改善(Jacobsen 2015
体重増加の回避ボルチオキセチンかSSRI。ミルタザピンは避けるブプロピオンの軽い体重減少を再現する国内薬はない。体重増加のリスクが高いのはアミトリプチリン・ミルタザピン・パロキセチン(Serretti 2010
SSRIへの増強アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、リチウム、ミルタザピン追加CANMAT 2023 はアリピプラゾールとブレクスピプラゾールを第一選択の増強薬とし、ブプロピオンは2016年版の表で第二選択。CO-MED ではエスシタロプラム+ブプロピオンはエスシタロプラム単剤に勝らなかった
ADHDコンサータ(登録制)、アトモキセチン、グアンファシン。3剤とも成人適応あり。リスデキサンフェタミンは小児のみ成人ADHDへのブプロピオンの効果は小さく確実性も低い(SMD -0.50、Cochrane 2017)。国内の3剤は第一選択薬であり、多くの場合は格上げになる
禁煙バレニクリン(ニトロソアミン問題による出荷停止を経て2025年10月30日に通常出荷再開)、ニコチンパッチ・ガム直接比較でバレニクリンがブプロピオンに勝る(OR 1.59、Cochrane 2013)。ブプロピオンと単剤NRTは同等

避けたい置き換えが2つあります。1つは、SNRIを「ブプロピオンにセロトニンを足したもの」と見なすこと。意欲と疲労だけを見ればベンラファキシンとデュロキセチンが最も近い薬です。ただし、患者さんがSSRIをやめた理由そのもの、つまり性機能障害と中止時症状が戻ります。もう1つは、診断のないADHDの役割を黙って抗うつ薬に引き継がせること。ブプロピオンがADHDの薬として働いていたなら、まずADHDとして評価し、そのうえで治療を決めます。

切り替えの進め方

2〜4週間の交差漸減が標準です。 服用期間が短ければ直接切り替えでも構いません。この幅は英国NHS Specialist Pharmacy Serviceの切替ガイダンスに沿っています。ブプロピオンは中止時症状が少なく、セロトニン作用もないので、SSRI・SNRI・ミルタザピン・ボルチオキセチンと重ねてもセロトニン症候群の心配はありません。半減期は約21時間(FDA添付文書)。移動中に1日抜けた程度では問題になりません。

CYP2D6だけは手順が変わります。 ブプロピオンが抜けると、併用中のベンラファキシン・リスペリドン・アリピプラゾール・アトモキセチンの血中濃度が下がります(阻害は最終投与から1週間以上続く。FDA添付文書)。特にアトモキセチンは計画が要ります。ストラテラの添付文書はCYP2D6阻害薬を併用注意に挙げ、時間をかけた増量を求めています。重なっている間は40mgで止め、抜けきってから80mgへ上げます。

海外の主治医側は、渡日前に置き換えを始めておくのが現実的です。安定したレジメンと記録があれば、国内では通常の再診から始められます。受け入れる側から見ると、持ち込んだ1か月分がそのまま交差漸減の期間です。初回の再診はその中に入れます。

切り替え後に想定しておくこと

表で決まらないところが3つあります。

  • 新しい薬で性機能障害が出たら、追加ではなく切替。 ランダム化比較の根拠は切替の側にあります(SSRIによる性機能障害で切り替えた患者さんで、ボルチオキセチンがエスシタロプラムに勝る。Jacobsen 2015)。アリピプラゾール追加の根拠は3試験をまとめたpost hoc解析まで(Fava 2011)。国内の適応も効果不十分時の増強で、性機能障害ではありません。アカシジアと体重増加のリスクも加わります。
  • 切り替え後にADHD症状が表に出ること。 ブプロピオンは成人ADHDに適応外で使われ、SSRIはその役割を引き継ぎません。頻度のデータはありませんが、聞き直すと注意の問題がうつ病より前からあった、という人は多くいます。評価したうえで、成人適応のある3剤から選びます。
  • 体重。 体重を減らす方向に働く国内薬はありません。そのことは先に伝えます。ミルタザピンを使うなら、開始時と毎月の体重測定を組み込みます。

よくある質問

Q. 患者さんがブプロピオンの個人輸入を続けてはいけませんか?

A. 法的には可能ですが、臨床的には勧めません。 規定内の個人輸入は認められています。ただ、供給が不安定で品質の確認もできず、処方医が責任を持てません。持ち込んだ1か月分は橋渡しに使い、国内の治療へ移してください。

Q. 国内にジェネリックや類似のNDRIはありますか?

A. ありません。 ブプロピオン製剤も、ほかのノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬も国内承認はありません。カテコールアミン系ではメチルフェニデートが近い位置にありますが、ADHDに限って登録制で使えるだけです。

Q. ブプロピオンがSSRIへの追加薬だった場合は?

A. 国内の薬で組み直します。 上の手順でブプロピオンを漸減し、SSRIは維持します。なお増強が必要なら、国内で保険適用のある第一選択の増強薬はアリピプラゾールです。


この記事は一般的な情報であり、個々の患者さんへの医学的助言ではありません。処方医向けに書いています。承認状況と添付文書は変わるので、最新の国内添付文書で確認してください。

Medically reviewed by our psychiatrist (M.D.). Updated 2026年9月12日.

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